安倍首相による安全保障戦略を理論的に批判し、日本の安全保障のあり方として「平和大国ドクトリン」を提唱するもの。
平和大国ドクトリンは、平和主義と国際協調主義を日本のアイデンティティとし、政治の現実としては自衛隊と日米同盟による専守防衛と9条部隊による国際平和支援活動を基本とする中級国家戦略である。
日本は戦後70年にわたり平和主義・国際協調主義により平和大国としてのブランドを築き上げてきたので、それを捨て去ることは日本が日本でなくなることである。また、日米同盟については将来的には国連緊急平和部隊へと発展的に解消すべきである。日米同盟と自衛隊PKOが発展的に解消して初めて個人の自衛権を国連へ譲渡するという憲法の理想が実現する。
本書は、日本の現状を踏まえたうえで、日本の過去と未来を見据え、どのような安全保障戦略が望ましいかを探っている。日本はもはや大国ではないし、これまでに培ってきた平和大国としてのブランドを生かすべきである。そこでありうべき戦略を説得的に提示していて、非常に参考になるものであった。