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清水真木『忘れられた哲学者』(中公新書)

 

  今では読まれなくなったが、大正期に盛んに読まれた土田杏村の概説書。

 土田によれば、すべての文化価値は社会的文化価値である。文化の価値は他人と共有され、社会の中で実現される。そして、すべての価値は平等であり、すべての文化生活は等価である。すべての社会集団は平等であり、そこで実現される価値も平等だからである。そしてこの文化価値は無限にある。

 土田の著作は非常に多い。それは哲学に限らず、評論や歴史など幅広い領域を覆っている。その中から清水は彼の主著を見出し、そこに彼の哲学の核心を見出す。土田はある意味ジャーナリスティックな論者だったため時代依存的だったが、そうではない普遍的な主張にこそ彼の基本的哲学があった。大変興味深かった。