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生松敬三『ハイデルベルク』(講談社学術文庫)

 

ハイデルベルク―ある大学都市の精神史 (講談社学術文庫)
 

  ドイツの古い大学都市であるハイデルベルクにまつわる人文学者たちの群像を紹介している本。

 ハイデルベルク大学には、古くからデカルトスピノザライプニッツなどがかかわりを持っており、その後にはゲーテヘルダーリン、ブレンターノなどがかかわった。20世紀初頭にはマックス・ウェーバーを中心としたウェーバー・クライスの本拠地となり、リッケルトヤスパースなどがかかわり、学問の中心的な位置を占めるようになった。

 本書は、ハイデルベルクという大学都市の精神史であり、ひとつの大学にこれだけ多彩で優秀な人材が歴史とともに去来したということが分かる貴重な本である。また、記述の切り口としては人々の交遊録のようになっており、学者たちの思想の内容には深入りしていない。大学都市という場を切り口にしたドイツ学問史の一断面であり、このような切り口は大変興味深い。