社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

早川和男『居住福祉』(岩波新書)

 

居住福祉 (岩波新書)

居住福祉 (岩波新書)

 

  憲法に規定される生存権を具体化するためには、居住に関する諸権利も保障しなければならない。本書は、社会福祉の一分野として居住福祉を掲げ、十分な清潔さや広がりなどを備えた住居が人間の健康で文化的な最低限の生活を作ると主張する。そして、この居住福祉の理念は国際会議でも独立した権利として主張されているし、日本人もまた権利意識をもって居住における十全な保障を主張していく必要がある。

 本書は阪神大震災ののちにかかれたもので、大震災によって一番被害を受けたのが弱小住居だったことを大きな問題点として取り上げている。居住の整備は災害の被害を縮減される役にも立つのである。それにしても、生存権には確かに住居がけがや病気のもとにならないようにきちんと整備される権利も含まれているし、住居に関する補助を受ける権利も含まれているだろう。生存権の具体的な実現過程として、現在のより高度化した要求にこたえるためには居住福祉の理念が欠かせない。