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仕事と教養

 会社で働いていると、同僚のほとんどは教養を持っていない。それでも会社は問題なく回っていくのである。そのような状況を見ていると、やっぱり教養なんて社会で何の役にも立たないのだなあ、と思ってしまいがちである。だが、教養それ自体というよりも教養を身につける過程で手に入れる能力は、仕事でも十分役に立つと思われる。
 まず、文章読解能力。教養人はよく本を読むため、難解な本でも十分読解できる。ところで、仕事ではしばしば難しい法律の文言などを読解しなければならないことがある。そういうとき、教養人は難なく内容を理解できるのである。
 次に、作文能力。教養人は文章を書くことに長けているため、仕事で文章を作成する場合に特別な訓練がいらない。もちろん職種に応じた文章の決まりごとはあるだろうが、基本の作文能力が出来上がっているため、文章の作成も比較的容易に行える。
 そして、情報検索能力。教養人は自らの教養を広げるために常に情報収集を行っているし、必要な知識を得るための必要なルートについてわきまえている。ところで、仕事では様々な領域の知識が必要とされることが多い。その際のウェブや紙媒体からの情報収集能力に教養人は長けているのである。
 さらに、創造力。おそらくこれが教養人の一番の強みだと思われる。企画の立案などにおいてよい立案をするためには、ベースとして幅広い知識が必要になってくる。教養というものは何よりもこのベースにある幅広い知識であって、それを備えている教養人は優れた立案を行えるのである。
 もちろん、これらの能力は特に教養を持たない人たちでも仕事を積み重ねていくうえで自然に獲得していくものだと思う。だが、教養人はそもそもの出発点においてこれらの能力に長けているため、仕事を行うにあたっても一歩先んずることができる。教養それ自体が直接役に立たなくても、教養を育むにあたって獲得する能力は仕事の役に立つのである。