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細田晴子『カストロとフランコ』(ちくま新書)

 

  冷戦期、スペインとキューバは独自の外交路線を敷いて互いに影響し合った。両国が国交を維持したのは、以下の三点に要約できる。

 まず、スペインもキューバも冷戦の二極対立から外れた位置にあり、独自外交政策を強調したこと。次に、カトリックを通じたスピリチュアルなつながりがあったこと。さらに、プラグマティックな通商政策の存在。

 それだけではなく、キューバは元スペインの植民地であったという歴史的なつながりや、モラルを重視するという国民性のつながりもあった。

 本書は大文字の歴史からは漏れてしまう隙間を埋めるような書物であり大変好感を持った。冷戦期、確かに二極対立から外れた国々も多かったわけであり、その具体例としてのスペインとキューバはとても興味深い。もちろん、ソ連やアメリカとの駆け引きもたくさんあったわけであるが、外交というものはなかなか複雑である。