社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

岡本浩一他『組織健全化のための社会心理学』(新曜社)

 

  組織不正とはどのようにして起こりどのようにして防げるか、社会心理学の観点から検証した本。

 組織の重大な不祥事は、しばしば意図的に行われる。違反等を防ぐ役割を果たすはずの会議等がうまく機能していないのである。ものごとではなく「誰が発言したか・決定したか」を重視する属人的風土の強い組織ほど、意図的な違反が起こりやすい。

 違反等が生じたとき、内部申告や公益通報が行われることがあるが、内部申告は申告者の組織への帰属意識が弱い場合や逆にとても強い場合に起こる。職業的自尊心(ノブリス・オブリジェ)が高いほど違反等を防げる傾向がある。

 組織的な違反等がどのような仕組みで起こるのかを科学的に検証していて興味深い。具体的なデータを示して論証していくので説得力がある。このような社会科学的手法により組織健全化を図っていくのは極めて正当な方法だと思われる。