ポストモダン以降の潮流である新しい実在論の代表的論者の代表的著作。
新しい実在論は、形而上学と構築主義を批判する。形而上学は、いかなる事象の背後にも人間の認識から独立した本質の存在を主張する。構築主義は、いかなる事象も様々な認識主体によって見られた諸様相に過ぎないと主張する。
形而上学は事象の実在性を考えられない。構築主義は構築作用の収斂する対象の実在性を考えられない。それに対して新しい実在論は、様々な認識主体によって構築された対象の実在性を認め、認識主体とは別に対象それ自体の実在性も認める。世界以外の全ては存在するのである。
理科系の学問を学ぶと科学的実在論に慣らされてしまう。科学的対象のみが実在すると教えられてしまう。ところが、新しい実在論は虚構の存在のようなものの実在性も認めるのだ。構築されたものですら実在するし、物事それ自体も実在する、ただそれらを総括する「世界」という大枠は実在しない。このように、ポストモダンはもはや乗り越えられる段階にあり、これから哲学上の様々な理論構築の動きがみられるだろう。