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黒人やユダヤ人について学ぶ理由

 私は最近、黒人やユダヤ人に関する書物を多く読んでいる。黒人もユダヤ人も、ともに世界史において迫害を受けた人種である。彼らには彼らの受難があり、迫害と闘い、地位を向上させてきた歴史がある。彼らの受難がどういう構造を持ち、そして彼らの戦いがどのように行われたか、私はそこに興味がある。
 というのも、私は福島県民であり、今回の原発事故によって被害を受けた人間であるからだ。単なる被災者というだけでなく、実際被災からの復興の仕事をしているので、福島県民の現状について当事者意識を持っている。すると、福島県民の受難とはどのような構造を持っていて、それを克服するにはどのような行動を起こすべきか、過去の歴史から学ぶ必要が出てきた。すると、世界史において顕著に受難したのはやはり黒人とユダヤ人なのであり、彼らがどのように受難し、それをどう克服してきたのかが大変参考になる。
 もちろん、福島県民と黒人・ユダヤ人を安易に結びつける気は毛頭ない。福島県民と黒人・ユダヤ人は却ってかけ離れているともいえる。だが、福島県民の受難は一種「民族的」受難であり、その構造を分析するためには、黒人やユダヤ人の歴史との比較が欠かせないと考える。
 奴隷としていわれもなくアメリカに連れてこられ、それから長い歴史をかけて人権を取り戻していった黒人の歴史。聖書の時代からさまざまな苦難を乗り越え、それでありながら世界中に散り散りになり、果てはアウシュヴィッツの犠牲者となったユダヤ人の歴史。それらの歴史を精査することにより、福島県民の置かれた地位を分析し、福島県民のとるべき行動が見えてくるような気がするのだ。