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用地職員を2年半やって分かったこと

 私は今用地職員3年目であり、おそらく今後は用地職員をやらないであろうと思う。だが、用地職員の経験は貴重なものであり、私はそこから多くのものを得ることができた。もちろん、用地職員は二度とやらないつもりではあるが。

1 用地職員とは
 公共的な事業を行うにあたって必要な土地を買収したり賃借したりする際に、実際に現地住民と接触し、土地売買契約や土地賃貸借契約を取り交わす職員である。住民対応が多く、また住民の権利関係というデリケートな部分に接する仕事であるため、ストレスが多く、心を病む職員も後を絶たない。

2 コミュニケーション能力
 用地職員に要求されるのは何よりもコミュニケーション能力である。これは単なる説明能力とは異なる。用地職員は土地売買などの説明に際して、常に相手方に気配りをしなければならない。上から目線で説明するだけでは相手の納得は得られない。事業に協力していただくことに対する感謝の姿勢、誠心誠意対応するという姿勢、そういうものを示しながら丁寧にコミュニケーションを行う能力が必要とされる。そして、相手方の要望などに対して臨機応変に対応する能力も必要である。

3 スケージュール感
 用地契約は、工事に先だって必要となるものであるため、工事のスケジュールを頭に入れたうえで契約を結ぶスケジュールを組んでいかなければならない。しかも、一人の職員は複数の案件を同時にこなさなければならないから、期限が早く来るものから優先的に取り組んでいき、常にスケジュール意識を念頭に入れたうえで仕事に取り組む必要がある。そして、このスケジュール感は常に前倒しである。工事は基本的に早ければ早い方がいい。

4 結果主義
 用地職員は、契約をとってナンボの仕事である。契約締結という結果を出さなければ評価されない。確かに難航する交渉もあると思う。だが、頻繁に足を運んだり丁寧に依頼したりして、何とか契約締結という結果を出さなければならない。社会人の鉄則である結果主義がもろにあらわれてくる仕事である。ここで結果主義が叩き込まれる。

5 現場主義
 用地職員は現場をよく観察する必要がある。買収などを予定する土地がいったいどのような土地であるか、またそこの地権者がどういう人であるか。土地を評価するにあたっても、現場の状態を確認するのが基本であるし、何よりも工事がその現場でどのように行われるかを頭に入れる必要がある。極めて具体的な思考が求められる仕事である。

6 専門性
 用地職員は物件の補償や登記なども行う。ところで、この補償や登記というものにはかなり専門的な知識が必要である。そういう専門的な知識を飽くなく探求していく探求心と旺盛な知的好奇心が必要である。だから、用地職員は大体勉強熱心になる。また、補償や登記に限らず、用地を買収するというだけで様々な問題点が生じてくるので、事例集などをよく読み用地契約にこぎつけなければならない。このような専門性が身につくのはなかなか良いことである。