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人間関係の改善のために

 人間は長い人生の間、人間関係が悪化することがままある。だがその際に一番やってはいけないことは、「こいつが悪い」「あいつが悪い」という犯人捜しである。誰かを犯人に仕立て上げれば問題は解決するどころか一層悪化する。人間関係が悪化するとき、多くの場合は場の構造やコミュニケーションの相性に問題がある。場の構造やコミュニケーションスキルを改善することで人間関係が改善されることはよくあることである。
 例えば、お金がなくて困っている夫婦が双方のお金の使い方でけんかをしているとする。この場合どちらかが悪いのではなく、単純に貧しいことが問題なのである。だからその夫婦は不毛なけんかや悪者探しをすることより、まずは所得を上げることに注力すべきである。要するに、問題を生み出している場の構造を改善することにより、人間関係も改善するのである。
 例えば、攻撃的な上司が気弱な部下をいじめているとする。この場合、攻撃的な上司は部下を尊重できていないし、気弱な部下は自己を主張できていない。お互いにコミュニケーションスキルに問題があるのである。攻撃的な上司は部下の尊厳を認め、部下は自分の言いたいことをもっと主張するようにする。そのようにコミュニケーションの仕方を変えることで問題は改善する。
 もちろん、集団の中には腐ったリンゴがいるかもしれない。問題を生み出す元凶となる人がいるかもしれない。だが、そういう人に問題を起こさせないように場の構造を変えていく、周りの人間たちがコミュニケーションの取り方を工夫する、それだけで人間関係の問題は大幅に改善されるはずである。
 繰り返すが、人間関係の問題で一番よくないのが犯人捜しである。誰かが悪いわけではなく、場の構造やコミュニケーションスキルの改善が必要なだけなのだ。そこの意識を取り違えないようにしよう。