痛みについて脳性麻痺を持つ著者が4人と対談した記録。
痛みはフロイト的な精神分析によっては物語化することによって消えるものだった。ところが痛みによっては物語化できないものもあり、「新しい傷」と呼ばれる。新しい傷を癒すには、痛みはそもそも他人には分かり合えないものだという共感、つまりコミュニケーションにならないコミュニケーションが重要である。また、新しい傷の治療には、医師への信頼が重要で、たとえ病名を知っていても、それを信頼することなくしては治療に向かわない。また、痛みの当事者が自助グループなどを形成して知の生産者になっていくことも重要である。
本書は痛みを主題として哲学的に論じた数少ない著作の一つである。大澤真幸との対談が最も示唆的であり、痛みの本質に迫るものであった。痛みというものは、時代によっても変わるものだし、現代は痛みに敏感な時代だと思う。このような時代に痛みについて考えるということは大事だと思う。そして私も考え続けたい。