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玄田有史『雇用は契約』(筑摩選書)

 

雇用は契約 (筑摩選書)

雇用は契約 (筑摩選書)

 

  雇用期間に注目して労働状況を分析し、現在の多様な雇用形態に着目し、雇用契約の重要性を説いた本。

 雇用契約には4つのパターンがある。①無期契約・一般時間の組織型業務遂行、②無期契約・短時間のWLB対応型業務、③有期契約・一般時間のプロジェクト型業務、④有期契約・短時間の臨時・補助型業務、である。従来のメンバーシップ型、ジョブ型に限らず、近年ではプロジェクト遂行のためのキャリア志向有期契約が注目される。そして臨時・補助型業務は労働条件や仕事の満足度などにおいて問題がある。WLB対応型はこれから活用が期待される。

 このように雇用形態によって労働者の処遇は違うのであるから、自らの労働契約を把握しておくことは肝要である。雰囲気に流されず、労働契約の通知を求めるべきである。契約が尊重されながら職場の仲間同士で協力し合い相互に高め合う雇用契約社会を実現することが重要である。

 本書は契約の観点から雇用を捉えなおし、雇用形態について的確な分析を加えたうえ、雇用期間が不明である労働者たちが不利な条件に置かれていることを指摘、だから雇用契約はしっかり把握しようと主張している。確かに日本企業はいまだに契約の観点が弱いと感じざるを得ない。雇用というのは雇い主と労働者との間の契約に過ぎず、それ以上でもそれ以下でもないということを冷厳に見つめる必要がある。そしてその観点からポジティブに未来を切り開いていく必要がある。