環境問題としての水問題についての入門書。
グローバルリスクとしての水危機は以下のようなものである。
(1)人口増加の二倍の速度で水利用が増大し、世界の多くの人々が水ストレスにさらされる
(2)世界人口の9人に1人が改善された水源に飲み水を求められず、3人に1人が改善されたトイレを使えず、衛生面から毎年350万人が命を落としている
(3)2000~2006年の間の干ばつ、洪水、高潮によって、30万人の命が奪われ、50兆円の損害が生じている。
このような水危機を防ぐため、水にかかわる企業活動のリスクを、その生産物当たりの水使用量としてのウォーターフットプリントとして量化することが提唱されている。また、世界では水危機が深刻な国とそうでない国があるが、そこで紛争が起きない工夫として仮想水の貿易が挙げられている。これは、食料の貿易を、その食料の生産に必要な水の貿易ととらえなおす見方であり、仮想水の貿易が水の世界的な分配を担っている。そして、気候変動については気候変動を緩和するだけでなく、気候変動が起こっても被害を低減する適応策が盛んに現実化している。
環境問題というと温室効果ガスばかりが注目されがちだが、実際は水についても大きな危機が迫っており、本書は水危機の観点から我々に環境への意識を喚起しようとしている。とにかく水危機という切り込み口が新鮮であり、しかも切迫した危険性を持っているとのこと、我々はこの点についても議論を尽くしていかなければならない。