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高木宏夫『日本の新興宗教』(岩波新書)

 

日本の新興宗教―大衆思想運動の歴史と論理 (岩波新書 青版)

日本の新興宗教―大衆思想運動の歴史と論理 (岩波新書 青版)

 

  日本の戦前戦後の大衆思想運動について記述した本。

 天理教立正佼成会創価学会などといった新興宗教は、戦前に生まれたものであるが、戦争期の国家神道一元主義による弾圧を潜り抜けて戦後になって栄えている。新興宗教は純正な宗教というよりは大衆思想運動の一環としてとらえるのが妥当である。その意味で、マルクス主義運動や他のサークル運動と同列に取り扱うべきである。

 新興宗教は初期の未熟な段階から、様々な批判にさらされて教義を確立し組織を体系化しどんどん合理化されていく。そして近代科学との対立の中で、近代科学では説明できない信仰の部分をカバーする。キリスト教も仏教も、あらゆる宗教は初めは新興宗教であり、時代を経ることにより同じような合理化の過程を経た。

 本書は1950年代に書かれた本であるが、新興宗教を大衆思想運動という広い文脈に位置付けており参考になる。だが、大衆思想運動と位置付けたがために宗教を他の運動と分けることが難しくなり、宗教の独自性がいまいち追求されていない感がある。いずれにせよ、戦前から戦後にかけての民衆の思想運動について詳細に知ることができて得るものが多かった。