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筒井淳也『仕事と家族』(中公新書)

 

  仕事と家族のこれからのありかたを指し示す提言の書。

 工業化に伴い、戦後の一時期には「安定的に雇用された男性と家庭の責任を持つ女性」という性別分業体制が各国に定着した。だが経済成長の低迷に伴い、「高負担・高福祉」を堅持したスウェーデン、「低負担・低福祉」路線のアメリカという二つのモデルが登場した。スウェーデンアメリカはどちらも女性の有償労働への参加率が高く、それが高い出生率へと結びついている。

 そこで、日本がとるべき道として「共働き社会への移行」が挙げられる。女性の社会進出はある時点までは出生率にマイナスの影響を持ったが、ある時点からは女性が働くことがカップル形成や出生にとってプラスの効果を発揮し始めた。有償労働の世界で女性・高齢者・移民が働くことがケアワークの活性化を通じて出生力の向上を促す。

 本書は家族社会学の立場から日本の出生力を上げるための女性の働き方について国際比較をもとに提言する本である。随所に鋭い考察がちりばめられていて、女性の社会進出の問題、出生力の向上の問題について示唆に富んでいる。非常に学ぶところの多い本であるので、いろんな方にお薦めしたい。