社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

佐藤・武石『ダイバーシティ経営と人材活用』(東京大学出版会)

 

  現代の組織の経営サイドの喫緊の課題となっているダイバーシティ経営についての論文集。

 現代の組織では、これまで中核人材として活用してきた「日本人男性で、フルタイム勤務かつ転勤や残業の要請に対応可能」な人材層だけを用いることが困難になってきた。転勤や残業を望まない労働者、女性労働者の活用、ワークライフバランスの要請や介護などとの両立から、これまでの中核人材の調達が困難な状況となっている。

 本書は、転勤の問題や女性管理職の問題、WLBの問題などを一つ一つ取り上げ、そこで経営陣のダイバーシティ経営への理解や柔軟性のある取り組みが要求されていることを浮き彫りにしている。これからの組織経営の在り方として、様々な要望を持つ労働者を多様に管理していくことが求められている。

 この本は、いちばんは管理職の層に読んでもらいたい本であるが、非管理職の労働者であっても自らの働き方や自らが直面している悩みへの対処法を学ぶ上で有用である。いろんな人々に広くお勧めしたい優れた本である。