ジョン・ロックの思想を神学的な観点からとらえなおす意欲作。
ロックの思想は複雑であるがその根底にあったのは、人間の善き生の条件を、神が定めた義務の遂行に見出す「神学的パラダイム」であった。
人間は神への最高の義務として「魂の配慮」に努めなければならない。そして、政治的統治は現世的利益を保全する固有の目的に仕え、「魂の救済」に介入してはならない。それゆえ、ロックは厳密な政教分離を主張した。
また、ロックが『人間知性論』で認識論に取り組んだのは、「神の沈黙」のうちに隠された人間の生の宗教的で究極的な意味根拠を知性によって認識し、論証しようと考えた人間ロックに独自の精神の在り方だった。
本書は、ジョン・ロックの思想を彼の宗教人としての立ち位置から読み直す画期的な作品であり、幾分仮定的な側面はあるとしても首尾一貫した優れた本である。教科書的なロック理解は多くの人がすでに持っていると思うが、そこに新しい視角を導入する知的刺激に満ちた本である。