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山崎亮『コミュニティデザインの時代』(中公新書)

 

コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書)

コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書)

 

  建造物をデザインするのではなく、人のつながりをデザインするコミュニティデザインの試み。

 人々は個人主義の台頭の中、再びつながりを求めている。そこで自発的なコミュニティによりどころを求め始めている。箱ものを作る時代は終わり、これからはそういうコミュニティにおける人と人とのつながりを設計する時代だ。日本は早くから人口減少に悩まされてきたのだから、人口減少については先進国である。人口減少を所与のものと受け入れて、うまくコミュニティの規模や態様をデザインする必要がある。

 コミュニティデザインには四段階ある。ヒアリング、ワークショップ、チームビルディング、活動支援である。その地域の現状を聴きとったうえ、住民に街づくりについての意見を出してもらい、実際に人に役割を振り分け、その後の活動を見守ることである。

 本書は、人口減少時代をありのままに受け入れたうえで、その際に必要なつながりをデザインする取り組みを行っている先駆者の著作である。発想がかなり現代的で、「新しい公共」論とか「社会関係資本」論とかが具体的にこのような実践として現れたか、という感じである。今までいろんなところで読んできた現代社会への処方箋が今ここで実践されている。素晴らしい。