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ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)

 

  イギリスで保育士をやっている著者によるイギリスの貧困問題目撃談。

 イギリスでは労働党政権時に拡大された福祉政策が保守党政権になってから縮小され、それは貧困層に大きなダメージを与えた。保育所もかつては底辺層をしっかりと扱っていたのに、今では予算が削られ底辺層というより移民層が入ってくるようになった。そして、保育所に来る子供たちの親のほとんどは薬物依存、シングルマザーなどの社会的な問題を抱え、子供たちの間にも階級の差が生じている。階級の差もあれば移民と英国人との葛藤もある。とにかく保守党政権下のイギリスは福祉政策に関してブロークン・ブリテンを作り出してしまっている。

 本書は、保育士として実際現場で働いている著者による日々の仕事を記述する一方、その背後にある政治問題を浮き彫りにしている。ミクロから発されたマクロへの問題提起であり、本来政治とはこういうところから発生するものなのであろう。政治はミクロな個人へダイレクトに影響する。それが特に貧困層に対して謙虚である。日本も同じわだちを踏もうとしていないだろうかと不安になる。