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残間里江子『閉じる幸せ』(岩波新書)

 

閉じる幸せ (岩波新書)

閉じる幸せ (岩波新書)

 

  編集者などいくつかのキャリアを駆け抜けたキャリアウーマンの生き方エッセイ。著者は山口百恵の自伝を手掛けたりした敏腕編集者である。人生の閉じ方についての具体例も、著者の交友範囲の広さを示すもので面白い。

 著者の主張としては、人生にとっては閉じることが大切であり、人生の棚卸をすることで余分なものを閉じていき、本当にやりたいことに邁進していく姿勢が大事だということだ。閉じるということはポジティブなことで、人生の各段階でうまく閉じることがその後の人生の充実につながる。

 本書はエッセイであるから、構成の点や論理の点において弱い。とにかく著者が実感として得たものを書き綴っているので、そこに生じる事実性こそが取りえであろうか。だが、それでありながら「閉じる」という一つのテーマを据えているので、どうもそのテーマにうまく収れんしきれていない。まあ、エッセイであるから、著者という一人の人間の生きた声として味わいたい。