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友人の死から考えたこと

 今年の4月、私の親友が死んだ。自殺なのか病気なのか詳しくは知らない。だが、彼の一生は不幸だったと私は思う。
 大学生のとき、彼は恋人と楽しく学生生活を満喫していた。だが、理系の大学院に入って、そこでの過重負担のストレスで酒に逃げアルコール依存や鬱などを発症した。恋人とも別れ、その後大学院を中退、実家に帰って鬱々とした日々を過ごしていた。何年か経ってようやく働けるようになったが、仕事はどれも長続きせず、主に介護職を転々とした。最後はつぶれる寸前のバーの経営に携わり、そのまま亡くなってしまった。
 彼は人生においていろんな社会の矛盾と直面している。まず、理系大学院のブラックな環境。彼の不幸はここから始まっている。理系大学院の運営を、スタッフ増員や院生の負担軽減などで改革していかなければならないだろう。
 次に雇用制度。彼のように気分が落ち込んだりして仕事が長続きしない人でも普通に働けるような、多様性を認める労働環境が求められる。さらに、介護職の現場は厳しい割に賃金が安い。介護の現場がもっと魅力的になるように社会を変えていく必要がある。
 また、健康に配慮する啓発などももっと必要かもしれない。親友はかなり太っており、それが彼の死期を早めたと思う。そして、結婚への援助。彼も結婚していればもっと心が安定して幸せに暮らせたはずだ。
 私は彼の死が無念でならない。彼は社会に殺されたのだと思っている。だが今の社会が一朝一夕で変わるはずもないし、私に社会を変える力はほとんどない。だが、私は彼の死を無駄にはしたくない。彼の死であらわになった社会の矛盾に対しては、微力で構わないから少しでも改善の方向へ援助していきたい。それが私の彼に対する最大の供養となるだろう。