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野矢茂樹『そっとページをめくる』(岩波書店)

 

そっとページをめくる――読むことと考えること

そっとページをめくる――読むことと考えること

 

  本書において野矢はまことに簡潔明瞭な書評をしている。書評にはその人の文体が如実に表れるものであるが、論理的で要を得てわかりやすく、という野矢の文体は書評においても健在である。この本はこういうことを言っている、どうだ読みたいだろう、と読者をいざなうのが本書のスタイルだ。そして、書評の神髄とはまさに書評の対象を読者に読みたいと思わせることにあるはずである。

 本書が取り扱っている本の範囲は一般的な教養書であり、学術書ほど難しすぎずかといってライトすぎず、一般的な大人の教養人が教養を深めるのにちょうどいいタイプの本ばかりである。ちょうど私が普段読んでいるようなレベルの本が多くて、選書の際にとてもためになるものであった。

 自分の本を書評するというお茶目な側面もあり、全般的にユーモアに満ちていた。ぜひとも多くの人にお薦めしたい。