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速水健朗『都市と消費とディズニーの夢』(角川oneテーマ21)

 

 現代の都市は効率化の波にさらされている。至る所を最大限有効利用しようと、様々な工夫がなされている。例えば市街地の空いている土地にコインパーキングを設営したり、公共施設や病院に民間のカフェやコンビニを誘致したり、サービスエリアを民営化したり、駅や空港など公共の空間をショッピングモール化したり。

 速水健朗『都市と消費とディズニーの夢』によると、このように、新自由主義的な思想のもと競争原理を導入して公共的なスペースを最大限有効活用することをショッピングモーライゼーションという。新自由主義的な街の変化である。速水は同書において、ショッピングモールの思想と歴史について詳述し、現代の都市の風景の起源と変遷について丁寧に叙述している。

 確かに、現代の都市の風景を眺めると、そこにはリベラルな景観重視であるとか環境重視であるとかそういうモーメントよりも消費を最大化するモーメントの方が目立つ。現代の都市は消費に最適化され、そのインフラとして強力なのがショッピングモールというわけである。

 その一方で、都市化から離れた名所名跡はいまだ新自由主義の波にはされされていない。景勝地においてはそこを中心にショッピングモールができていたりということはほとんどない。景勝地においてはいまだ自然重視の力学が働いている。

 効率化や合理化、有効利用の思想は消費を最大化し利益を最大化するという資本主義の落とし子であり、現代の都市はその波にさらされている。一方で、非効率で非合理的で大して有効利用されていない空間もまだまだ地方には残っている。それぞれの存在意義が問われているように思う。