私たち夫婦は二人とも本が好きである。とはいってもお互いに本の趣味は違うから、読んでいる本はお互いに違う。それでも、二人とも共通で興味のある本というのもある。それが夫婦関係に関する本である。
今まで夫婦でともに読んだ夫婦関係の本としては、北杜夫『マンボウ恐妻記』、はあちゅう『旦那観察日記』、黒川伊保子『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がある。どの本も、私たち夫婦の間に出現する問題はどれもほかの夫婦でも起こりうるものであり、その問題について私たちだけのものとして深刻に考えなくていいんだ、と教えてくれる。夫婦間の問題というものは人類普遍のものであり、それは適切な対処法を取れば解消できるのである。
『マンボウ恐妻記』は、ひと時代前の夫婦関係について書いているが、暴走する夫とそれを阻止する妻という幾分極端な夫婦関係が描かれていて、私たちの関係はもっと穏やかだよなあと安心したり、こういうことが将来起こったときの覚悟ができたりする。
『旦那観察日記』は新婚夫婦のあれこれを描いたものであり、我々も読んだ当時新婚であったから、とても共感して新婚特有の問題を共有することができた。
『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』に至っては、ストレートに夫婦間の問題を取り上げ、それへの対処法を指南してくれる。しかも脳科学の知見に基づいて科学的に助言してくれるのである。
私たちはこういった本を共に読むことで、夫婦間の危機があってもそれを私たちだけの問題ととらえず夫婦にありがちな問題だととらえ、本に書いてあった通りだと納得し、本に書いてあった処方箋でもって対処する。もちろん、本に書いていないあれこれの方が圧倒的に多いわけであるが、いわば私たちは双方に味方を付けている状態なのである。本を通じてお互いをよりよく理解し、争いを低減すること、ひいては離婚を回避すること。夫婦でともに夫婦間の問題について読書することは好ましい。