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今野晴貴『ブラック奨学金』(文春新書)

 

 

ブラック奨学金 (文春新書)

ブラック奨学金 (文春新書)

 

  私も学生時代奨学金を借りた。大学時代と大学院時代、合わせて400万円くらい借りたと思う。就職して順調に返済し、今では残額が100万円ほどになっている。だが、最近の雇用状況の悪化や本人の健康状態の悪化などにより、奨学金の返済が滞り、保証人にまで請求が行ったり裁判を起こされたりというケースが後を絶たず社会問題化している。奨学金の社会問題としての側面を扱った本として今野晴貴『ブラック奨学金』がある。
 まず、奨学金は教育ローンだという現実を直視しなければならない。そして、今は無利子貸与よりも有利子貸与のほうが件数が増えている。ローンということは、後々の人生によっては返せなくなることも十分想定されるということである。そのリスクを考えた上で奨学金を借りる決意をしなければならない。
 そして、奨学金の取り立ては厳しい。1か月滞納しただけで債権回収業者から電話がかかってくるし、滞納が続くと延滞金とまとめて一括請求され裁判を起こされる。現在、非正規雇用などが一般化してくるにつれて奨学金を返せない若者が増えていて、そういったときの免除措置などが充実していない。奨学金は弱者からも等しく債権を回収しようとする。
 私は今順調に奨学金を返済しており、このまま返済し終わる予定であるが、この奨学金という制度は国際的にも例が乏しいほどの日本の教育軽視から生まれていて、諸外国では給付制のものが一般化している。日本でももっと学生の経済的側面への支援が求められるところである。