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竹下正哲『日本を救う未来の農業』(ちくま新書)

 

日本を救う未来の農業 (ちくま新書)

日本を救う未来の農業 (ちくま新書)

 

  国民の幸福を実現するためにはその国が繁栄しなければならない。人々が活発にアイディアを出し合い、技術革新を行い、社会問題を解決し、より生産性を上げていくことにより国は繁栄する。繁栄を維持するためには停滞していてはいけない。常に先取の気勢を持って新しいことを取り入れ社会をよりよくしていかなければならない。

 ところが、竹下正哲『日本を救う未来の農業』によると、日本において農業分野は繁栄から取り残されていた。日本の農業は海外の先進的な農法を取り入れることを怠り、50年前と同じ農法で一向に収率を上げていない。竹下はイスラエルのドリップ灌漑及びそのAIを活用したきめ細かな運用を先進例として取り上げ、それがいかに農業の生産性を上げるかを主張する。日本は自国にとじ込まらず広く外国に学ばなければならないのだ。

 繁栄を続けるためには謙虚さが必要である。自前のものにこだわらず、良いものは素直に良いと認める気持ちが必要である。そして、良いものは自国の技術にも取り入れていく。時刻を相対化することにより初めて国際的競争力を得ることができるのだ。また、それは既存技術の相対化でもある。今までこうやってきたからこれでいいのだ、ではなく、既存の技術を常に見直し改善を重ねる必要がある。その改善にあたって参考になるのが他国の技術である。

 日本は農業だけでなく少子化や環境対策、女性の社会進出などで国際的に遅れをとっている。その事実を素直に受け入れて、自国を相対化し、他国の優れた制度や技術を謙虚に取り入れていく必要がある。繁栄を続けていくために。