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原田曜平『さとり世代』(角川oneテーマ21)

 

  最近の若者には覇気が感じられない、スマホばかりいじってきちんとコミュニケーションをとろうとしない、などと、おじさん世代からすると最近の若者に苛立つシチュエーションは増えているのではないだろうか。実際、上の世代と現代の若者の世代では育ってきた環境が異なり、価値観も異なるため、そのような軋轢が生じるようである。だが、最近の若者の声を実際に聞く、最近の若者がなぜそうなっているのかを理解することにより、若者との折り合いがつくと思われる。

 原田曜平『さとり世代』によると、1987年以降に生まれた「さとり世代」は、不景気しか知らないので消費や行動に慎重になり、そこそこの仕事に就いて周りと同調しながら友達のような上司に恵まれワークライフバランス重視で働きたいと思っている。また、彼らはソーシャルメディアで空気を読むことに慣れきっているため、目立つような「痛い」行動はせず、またいろんな場所や商品について情報を得ていて「既視感」をもっているため、無駄な消費を控え、ソーシャルメディアでつながった人とのお金のかからない付き合いを重視している。

 だから、今どきの若者はいい車を買ってステイタスにしようとか、出世してのし上がろうとか、そういう野心に欠けているし、海外旅行に行ったりとか派手な行動を差し控えるようになっている。バブル世代から見るとそういうところが気に入らないのかもしれないが、そのような若者たちを作ったのはほかならぬ大人たちなのである。

 若者たちは、長引く不景気やソーシャルメディアの発達に高度に適応しているがために今のような価値観を持っているのであって、むしろ現代に適応できているのはおじさん世代ではなく若者たちなのだ。おじさんたちは若者たちから現代の生き方について学ばなければならない。もはや「今どきの若い者は」などと苛立っているのは時代に取り残されている証拠でしかない。