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内田健三『戦後日本の保守政治』(岩波新書)

 

  政治記者が書いた本書は、学者が書いたと思うほど整然として無駄がなく情報量が多い。戦後日本の首相の系列を中心に据えて、彼らの足跡を追っている。GHQを後ろ盾とした強気な吉田茂、大衆政治家であった鳩山一郎、安保改定を強行した岸信介、低姿勢の池田勇人沖縄返還へと至る佐藤栄作。戦後政治を彩る群像を丁寧に描きながら、保守政治の流れを克明に記している。

 いかに日本国憲法が制定されようと、日本の政治風土が急に変わったわけではない。保守系政治家の反動の動きは常々起こっていて、しかも与党が保守系なのである。この政治家たちの保守路線と大衆の革新路線が衝突したのが安保闘争だった。大衆の意識は新憲法により大きく変化していたのに、政治家たちは旧来の価値観を抱き続けたのである。もちろん保守でも傍流の石橋湛山などは違ったようだが、それは例外であった。

 戦後というものを改めて考えさせられる一冊だった。