社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

主体なき政治

政治というものは様々な意味合いがあるが、基本的に支配権をめぐる争いだと考えておく。それは価値観を巡るイデオロギー闘争でもありうるし、文学作品の解釈をめぐる解釈論争でもありうるし、美術界における権威を巡る争いでもありうる。つまり、政治や経済…

六本佳平『法社会学』(有斐閣)

法社会学 作者: 六本佳平 出版社/メーカー: 有斐閣 発売日: 1986/02 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る 法社会学の体系的で標準的な教科書であり、ひとまずこれを読んでおけば、より細分化された論点にも全体的な観点から位置づけを与える…

P.-M.シュル『機械と哲学』(岩波新書)

機械と哲学 (1972年) (岩波新書) 作者: P.-M.シュル,粟田賢三 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1972 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 機械に対する人間の態度を歴史的に跡付けていった本。それほど深い哲学的洞察があるわけではないが…

社会的意識について

社会的意識とは、簡単に言うと、自己だけが世界の中心ではなくなるという意識である。自己に関係する利害だけに興味を持っている状態から、直接自己に利害的に関係しなくても、世の中に起こっている出来事に世界の中心を置き、その立脚点に立って世の中を見…

野田又夫『パスカル』(岩波新書)

パスカル (岩波新書 青版 145) 作者: 野田又夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1953/10/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る パスカルの人生と思想をコンパクトにまとめた本。一般向けの入門書。パスカルは科学者でありながら宗教に関しても大…

本田和子『異文化としての子ども』(ちくま学芸文庫)

異文化としての子ども (ちくま学芸文庫) 作者: 本田和子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1992/12 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (3件) を見る 山口昌男の「中心ー周縁」論を、だいたいそのまま「大人ー子ども」の対立に…

孤独の定義

孤独とはなんであろうか。私は、孤独を「交易不全」として定義したい。人間は交易する存在であり、互いにモノや感情や情報をやり取りする存在である。ところで、人間が他人と接触する場合、たいていこの交易の成就を求めているのであるし、人間が交易する場…

被害者意識について

何か大きな被害を受けたとき、人間は損害を被る。それは物理的な損害でもあれば精神的な損害でもあるだろう。被害者は加害者からその完全性を奪われたわけであるから、加害者に対して完全性を補償せよと要求することができる。これは矯正的正義と呼ばれるも…

歴史を学ぶ意義

人間に与えられているのは、厳密に自分の人生のみである。他人の人生も与えられていると言われるかもしれないが、それは伝聞の域を出ず、他人の人生について体験の質は伴わない。繰り返すが、人間に与えられているのは、自分の唯一の人生のみである。だが、…

成熟と社会

個人の意識のありようが変わっていくことで、法制度や社会制度は漸進的に変わっていく。もちろん専門的な領域などそうでないところもあるだろう。だが、基本的に、この生きられた社会にこそ、社会のルールを決める源泉があり、その生きられた社会の価値観は…

「個人の尊厳」と「平等原理」

個人の尊厳は日本国憲法の基本原理である。個人主義に基づき、全体主義を排し、個人の人格を不可侵のものとみなす。一方で、平等原理もまた憲法上の原理であり、同一条件の者には均等に機会を与えるというものである。これら二つの原理は、日本の最高法規で…

「政治」と「社会」の違い

政治的な活動をしているからと言って、その人が社会に対して適切な意識を持ち、社会に対して深い知識を有しているとは限らない。普通に言われる「政治」と「社会」の間には大きな隔たりがあると私は考えている。この点、幾分単純に図式化してみようと思う。…

暴力について

人間は、必ず一定の場所を占めて生存する。これは「存在」というよりも「暴力」と言った方が正しいように思える。なぜなら、人間はただ存在するだけでなく、自らの縄張りを支配して生存を確保するからだ。生存を確保するための場所や領域の支配、これを「暴…