社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

刑法学

作為と不作為

作為犯と不作為犯にそんなに大きな違いがあるのだろうか。作為犯と不作為犯の区別は、実行行為は原則的に「外形的に」存在しなければならないというドグマに基づいていると思うが、外形的であるかどうかは、犯罪論にとって本質的な問題ではないのではないだ…

付け加え禁止?

条件関係の判断で、現実化しなかった仮定的事情を付け加えてはいけないと言われる。行為者が2丁拳銃を持っていて、右手の銃で被害者を殺害した場合、「仮に右手の銃で撃たなかったとしても左手の銃で撃って具体的に同じ結果を引き起こせたのだから条件関係…

心理的関与

民法総則の詐欺・強迫が、刑法の詐欺罪・恐喝罪とある程度対応するのは分かる。しかもこれらは両方とも被害者を保護する規定である。ただ、民法の意思表示の瑕疵の規定は、自由な意思決定の利益を保護するのに対し、刑法の詐欺・恐喝は、財産上の利益を保護…

応報

応報という概念がいまいちよく分からなかった。一般予防や特別予防はよく分かる。なんらかの社会的利益を実現するために特定の制度を作るというのはよくあることで、刑罰制度もそのひとつと考えることができるからだ。 応報刑論というのは、カントに由来する…

故意の内容

故意があるとは、構成要件に該当する客観的事実を認識し(認識的要素)、その内容を実現する意思(意思的要素)をもつことである。だが、構成要件該当事実とはどの範囲まで含むのだろうか。 例えば殺人罪(199)の構成要件は「人を殺」すことだが、人を殺…

逆刑法

刑法は構成要件に該当し違法で有責な行為を罰する。 だが、ここで「逆刑法」というものを考えてみよう。刑法には悪が列挙されているのに対し、逆刑法には善が列挙されているとする。刑法の「罪」に対して、逆刑法には「徳」があるとしよう。例えば死にかけて…

疑問

小林憲太郎が「因果関係と客観的帰属」(弘文堂)の冒頭で、条件関係公式と結果回避可能性の話は同じことだと言ってるのだが、まともな説明がなされているわけでもなくはなはだ不親切である。なので自分で考えてみる。 まず、条件関係は構成要件の段階の話で…

民事責任と刑事責任

人を殺せば殺人罪に問われ、また不法行為責任を負い損害賠償をしなければならない。だが、これはひとつの行為に対して二重の罰を与えていて不合理なのではないか。懲役刑を受ければもうお金は払わなくても良い、あるいは、お金さえ払えば懲役刑は受けなくて…

談合罪の特殊性

談合罪(96条の3第2項)における「談合」とは、公の競売・入札において、競争者が互いに通謀して、ある特定の者をして契約者たらしめるために、他の者は一定の価格以下または以上に入札しないことを協定することを言う(最決昭28・12・10)。だが…

■因果関係 因果関係はこの世界に充満している。私がこのようなブログを書いている原因は法律学を勉強したことである。私が法律学を勉強した原因は私の職に就こうという決意である。何も人が殺されたときにだけ因果関係が働いているわけではないのである。 そ…