社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

雑感

団体

団体ってなんだろうと考えているのだがうまくまとまらない。結局、「目的を実現するために人や物が集まること」だとは思う。そして、目的の実現のために、人はその行動や財産の利用について様々な制約を受けていく。目的実現のための個人の権能の制約が進む…

法律自体については、選挙を通して国民の意思が反映されてると言えるので正統性があると言える。だが、法律の解釈と適用については、司法の作用だから、国民の意思に基づいているとは言えず、正統性がないのではないか。裁判員制度はこの正統性を充填するも…

法の守備範囲

法的思考には限界があるが、その限界を確定しなければならないはず。それこそが批判Kritikの役割だ。たとえば、私がいま赤いものを見ているとしよう。この「赤さ」は、「赤さを感じる権利」と同じではない。なぜならば、「赤さを感じる権利」は少しも赤くな…

主観的共同関係

連帯債務における主観的共同関係というものがいまいちよくわからない。結局、「みんなで一緒に払おうよ」という心理的な共同関係なのだろうが、それを法的・論理的にうまく説明できない。200万の債務をA・Bが同じ負担分で連帯して負っているとき、Aが80…

学問の内在化

大学院にいて思ったのは、大学院の性格上、学問を内在化していない人が意外と多かったということだ。学問を内在化するとは、物事を学問的に認識する態度を形成するということだ。法律学についていえば、ただ条文や学説や判例を機械的に覚えるのではなく、そ…

他学部卒

「他学部卒」という私の属性は、私にとってコンプレックスであると同時にプライドでもあり、場合によっては言い訳として機能する。私を規定している属性は他にもたくさんあるが、ここ数年私に強く意識される属性は、ほかでもない「他学部卒」という属性であ…

義務の不履行

義務の不履行という意味では、公法上の義務の不履行も債務不履行も同じである。公法上の義務の不履行に対して、政府は自力執行(過料、代執行など)できる。それに対して、債務不履行の場合は、私人に自力救済が認められていないため、私人は裁判所へ出訴し…

弁論主義

事実の調査・提出、証拠の調査・提出について、裁判所が主導するか当事者が主導するかで、4パターンが考えられる。(1)職権調査・職権証拠調べ、(2)職権調査・証拠の提出の弁論主義、(3)弁論主義・証拠の提出の弁論主義、(4)弁論主義・職権証拠…

故意と違法性の意識

(1)故意と違法性の意識の関係と、(2)故意だけで処罰できるかそれとも違法性の意識がないと処罰できないか、とは多少関係がある。故意と違法性の意識を無関係だと考える立場と、故意によって違法性の意識が擬制されるとする立場がある。故意と違法性の…

会社法の罰則

会社法の罰則の保護法益とはいったい何なのだろうか。特別背任罪とか、虚偽文書行使とかは刑法の延長上で理解できる。会社財産を危うくする罪の保護法益は会社財産であろう。だが、会社財産を危うくする罪で保護される利益は、そもそも刑罰でもって保護する…

law schoolの位置づけというものが、私は結局よく分からなかった気がする。分からないまま卒業してしまった。「理論と実務の架橋」とは言うけれど、理論と実務がそんなにスムーズに接続されていたかは疑問である。むしろ、law school生は、理論と実務の間で…

共謀と契約

お互いに意思を通じ合って何らかの結果を目指すという意味では、刑法の共謀と民法の契約に変わるところはない。ただ、目指す結果が異なる。共謀は法益の侵害を目指し、契約は互いの利益を目指す。だから、意思連絡が未遂に終わったときの効果も異なってくる…

疑う仕事

検察官や裁判官になれば、法廷において、特に刑事の否認事件において、当事者を疑わなければならなくなる。ところで、人間の日常生活というものは信頼関係が基礎であり、それがなければいろんなところで支障をきたす。人を信頼しながら日常生活で物事を運ん…

民事訴訟と刑事訴訟を比べると、やはり刑事訴訟の方が、争いが峻烈な気がする。刑事訴訟では、被疑者・被告人の人権と、実体的真実発見・公益維持という利益がまっこうからぶつかっている。重大な利益同士が火花を散らしているのである。それに対して、民事…

国籍

国籍というものが気味が悪い。国家との「法的紐帯」って意味が分からない。だからいっそのこと、国家を一つの法人としてみることはできないだろうか。もちろん、国家には領土や政府もその構成要素としてあるわけだけれど、政府は会社の機関に対応し、領土は…

慣習法の成立と時効制度は似ている気がする。事実状態の継続と、それを法的なものとする意思によって、事実状態に対応する法的効果が成立するという意味で。慣習法は一般慣行と法的確信、時効は法定期間の事実状態の継続と援用が要件になっている。ただし、…

我々学生は、主要科目とは異なる、先端的・実務的な科目の単位を一定数とらなければならないのだが、それらの科目の教え方に多少疑問がある。私が知りたいのは、それらの科目が、(1)基本科目との関連においてどのように位置づけられるのか、(2)どのよ…

暴力

暴力はいけない、という。だが、社会規範が維持されているのは、まさに背後に暴力が控えているからだ。国家は私人に代位して暴力を行使する。 暴力はいけない、という。だがだまされてはいけない。決裂した紛争を最終的に解決するのは暴力でしかありえない。…

日本国憲法は明治憲法の改正によって基礎付けられるとする説があるようだ。だが、日本国憲法において主権者は国民であり、明治憲法において主権者は天皇である。明治憲法の改正によって日本国憲法を正当化するということは、つまりは天皇の意思によって日本…

契約が原始的に不能でも有効とすべきと潮見佳男は主張している。契約を無効とした場合、調査義務の不履行による損害賠償はできるが、信頼利益しか請求できないとのこと。(契約本体は無効でも、契約に付随する義務は発生するようだ。)たしかに、目的物が滅…

ひとつの論点を考えるときには、まず、そこで登場する主体は何か、そこで問題となる対象は何か、という物理的(?)基礎をしっかりおさえる必要がある。訴権的利益をめぐる論点だったら、当事者が裁判所に対して請求を申し立てるのだから、登場する主体とし…

消費貸借契約にもとづく金銭債権を被担保債権として担保を設定するというのはよくあるが、売買代金債権や請負代金債権を被担保債権とするというのは聞かない。売買契約は双務契約だから同時履行(民533)であり、原則としてその場で代金を支払うから担保…

少年院

少年院のビデオを見た。少年の抱える問題を少しでも改善し、社会復帰を目指すため、職員が熱心に取り組んでいる。驚いたのは、職員と少年との間の強い信頼関係だ。実際はどうだか知らないが、あれだけ信頼できて心の奥までさらけ出せるような大人が近くにい…

請負契約については、仕事の目的物に瑕疵があれば瑕疵修補を請求できる(民634条1項)。だが、売買にはこのような規定はない。これは、請負の場合は、請負人は仕事をする能力があるのだから瑕疵を修補することができることが多いという事実に基づいてい…

人の権利能力って無制限なんだろうか。法人はultra viles理論により目的の範囲内に権利能力が限定されるとするのが一般的なようだ(民34)。同様に、人の権利能力も一定の制限が付されるのではないか。例えば、殺し屋が殺人債務を負うことは可能か。殺人債…

刑事訴訟における抗弁ってなんだろうって考えてて、違法性阻却事由とか責任阻却事由なんじゃないかと思い至った。つまり、訴因と両立し、かつ訴因の刑罰権発動という効果を打ち消すんじゃないだろかと。だけど、Wikipediaで調べてみたら、違法性阻却事由も責…

例えば刑法で責任論とか因果関係論とか読んでて思うのだが、刑法学の土俵でいくら論じていても埒が明かない問題というものがあると思う。そういう場合、議論の次元を基礎に引き下げて、哲学的な議論を援用する実益があると思う。だが、注意しなければいけな…

契約と合意解除って結構似てる気がする。どちらも、双方の意思によって権利義務関係を変動させているので。たとえば売買契約だったら、当事者の合意によって、売主には代金債権と目的物引渡し債務が設定され、買主には代金債務と目的物引渡請求権が設定され…

通説である控除説によると、行政権は、国家の作用から立法権と司法権を控除した残り、ということになってるけど、実は逆じゃないのかなあ。つまり、国家の作用というものは元来すべて行政権であって、行政権のうち特殊な性格を持つものを立法権、司法権とし…

正義感

正義感とは、不正義に対して憤る傾向、あるいは不正義をも含む複数の行動選択肢の中から常に正義の肢を選ぶ傾向、みたいなものだと思う。 私は大学院に入ってから、正義感が強くなってしまった。例えば刑事事件の事実関係なんかを読んで、その悪辣さに義憤を…