社会科学読書ブログ

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respons-ability,blam-ability

 大庭健は「「責任」ってなに?」(講談社現代新書)において、責任とはrespons-abilityすなわち「呼応可能性」であり、呼びかけに対して適切な反応を返してくるという「関係」のことである、と書いている。つまり、責任は主観的なものというより間主観的な関係であり、それはお互いの期待・信頼の関係であるということだ。例えば私が「ペン貸して」と言えば、相手はペンを貸すか「ごめん、今ペン持ってないんだ」と返す、それが責任の関係であり、相手が私を見ていきなりせせら笑ったらそこでは責任の関係が破綻しているのである。

 そう考えると、民法や刑法における責任とは特殊なものだということが分かる。それは国家権力によって追及可能な主観的な非難可能性(民法の責任の場合は社会的な公正を目的とし非難可能性を前提としない立場もあるが)である。respons-abilityとしての責任は、その関係が破られたからと言って非難が向けられるとは限らない。相手が少し違和感を感じるだけで終わることもあるだろう。だが、法的な非難可能性(blam-ability?)としての責任は呼応可能性としての責任が著しく破られたときに生じるもので、他人に不利益を与えるものであり、違反者に制裁が課される。