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 人の権利能力って無制限なんだろうか。法人はultra viles理論により目的の範囲内に権利能力が限定されるとするのが一般的なようだ(民34)。同様に、人の権利能力も一定の制限が付されるのではないか。例えば、殺し屋が殺人債務を負うことは可能か。殺人債務の設定行為は民法90条により無効であるから、殺し屋は殺人債務を負うことができないのではないか。とすると、人もまた、公序良俗に反する権利義務を享受する権利能力はないということにならないか。人の権利能力も、公序良俗に反しない限度に制限されているとはいえないか。

 法人は民法34条により権利能力が付与されるが、そのことは同時に行為能力も付与するということだろうか。法人が権利義務を享受するためには法律行為をすることが必要だと思われる。法人が社会経済的な活動をするためには、法律行為をする必要がある。まず行為能力があって、行為能力にもとづいて有効に法律行為がなされ、法律行為の結果の受け皿として権利能力が意味を成す。権利能力と行為能力は一応別の概念だと思うから、法人についても行為能力の根拠となる規定があっても良いような気がする。