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逆刑法

 刑法は構成要件に該当し違法で有責な行為を罰する。

 だが、ここで「逆刑法」というものを考えてみよう。刑法には悪が列挙されているのに対し、逆刑法には善が列挙されているとする。刑法の「罪」に対して、逆刑法には「徳」があるとしよう。例えば死にかけている人を救助することは、逆刑法上「救助徳」の構成要件に該当するとする(構成要件該当性)。そして、それが法益を利する結果を生じ(結果無価値ならぬ「結果価値」)また行為自体が社会的に勧奨されるべきものであるとき(行為無価値ならぬ「行為価値」)(違法性ならぬ「順法性」)、また自由意思によってなされた場合(責任ならぬ「自由意思性」)、国家からなんらかの褒賞が与えられるとする。

 しかし、逆刑法は存在しない。なぜだろうか。