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創作性

 人が表現するとき、まず、(1)思想・感情を抱き、(2)それを表現する。創作性の問題は(2)の段階(創作過程)の問題であり、いかに独創的な思想を思いついたとしても、その表現に創作性がなければ著作物として保護されないとされる。

 創作性を、「残された表現の選択の幅」ととらえるならば、以上のような把握は適切であろう。創作性をあくまで表現の次元で客観的にとらえているからである。だが、創作性を、「個性の流出」ととらえた場合、それがアイディアのレベルでの個性の流出なのか、表現のレベルでの個性の流出なのかは定かでない。著作権制度が、情報の豊富化の手段として、(1)アイディアの共有を重視するのか(2)個人の人格的利益を重視するのかで結論は異なってくると思う。アイディアの共有を重視するなら表現のレベルでの個性の流出を重視し、個人の人格的利益を重視するならアイディアのレベルでの個性の流出を重視することになろう。

 だが、著作権法はあくまで表現を保護している。そして、表現というものは、アイディアと創作過程の融合したものであり、表現にはアイディアが相当程度反映されている。それゆえ、設計図のように、アイディアは独創的でも創作過程に選択の幅がないとしても、創作性を否定すべきではないと思う。できあがった表現をアイディアと創作過程の融合したものととらえるならば、アイディアに独創性があれば、表現にも創作性を肯定してもよいのではないか。