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差し止め

 差し止めの根拠には二つあるような気がする。(1)独占を維持するためと(2)人間の尊厳を維持するため。

 所有権侵害に対して、損害賠償しか認められないとなると、侵害者は賠償金を払う限り所有権を侵害し続けることができる。これでは所有権の独占的性格に反するし、所有者は独占することによる精神的満足や経済的便宜という利益が奪われる。

 公害訴訟で差し止めが問題となるのは、その利益侵害が被害者の人格の尊厳を害するからである。損害賠償さえすれば被害者の利益の侵害を継続してよいとするのは、個人の尊厳という憲法原理に反する。

 著作権法の構成について、物権的構成ではなく対価請求権的構成も可能ではないかとある教科書に載っていたが、対価請求権的構成では、お金さえ支払えば著作物の利用が可能となって、差し止めができなくなり、著作権者の独占の利益や人格的利益が害され妥当でないように思われる。