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権利能力と責任

 権利能力と責任(Haftung,一般財産が引き当てとなる地位)はどうやら別物のようだ。つまり、権利能力あるところに責任が生じる、という包含関係にはない。それは、(1)人的担保(2)会社制度のところで明らかになる。

 まず、人的担保とは、債務を負っていないにもかかわらず責任を負う制度である。債務者の債務から債務者に責任が生じるわけだが、同じ債務についての責任は保証人にも生じうるのである。ここで、保証人は、主債務を負っていないにもかかわらず責任を負うわけで、責任は主債務から生じているわけではない。

 合名会社、合資会社には、直接責任を負う無限責任社員(合名会社・合資会社)・有限責任社員合資会社)というものがいる。会社は構成員と独立して権利能力を有するわけだが、その責任は無限責任社員有限責任社員が負っているのである。権利能力と責任が明らかに分離している。いわば合名会社・合資会社は不完全責任会社である。それに対して、株式会社・合同会社は、構成員は間接責任を負うだけで、権利能力と責任はどちらも会社に帰属する。いわば完全責任会社である。