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リーガルマインドの体系化

 法律学の基本書を読んでいると、法解釈における学説の対立において、著者の一定の立場が示される。その際に、特に根拠もなく、この説が妥当である、みたいな書きぶりで済ましてあるのを目にすることがある。妥当性の根拠について説明がなされている場合もあるが、その根拠自体の妥当性までは示されていない。

 つまり、法律学者というのは、一定のリーガルマインド、すなわち法的常識あるいは正義衡平の観念を持っていて、その明確に体系化されていない漠然とした常識をもとに説の妥当性を判断しているのである。ここに私は法律学の弱さを感じ取ってしまう。

 すなわち、ある論点についてのある説の妥当性を根拠付けるのにAという常識を使い、一方で別の論点で特定の説の妥当性を根拠付けるのにBという常識を使う、ということが起こりうるのである。AとBが親和的であれば問題ないが、AとBが対立していれば、その学者は根拠付けの次元で理論的不整合をきたしていることになってしまうのだ。これがなぜ起こりうるかというと、リーガルマインドが充分意識化され体系化されていないからだ。

 法律学者は、まず自分のよって立っている法的常識、リーガルマインドを批判し、それを意識化して体系化する必要があるのではないか。その体系化されたリーガルマインドを根拠に学説の対立を整理することが真の理論法律学だと思われる。つまり、法律学者は哲学や倫理学を学ぶ必要がある。