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権利保護の資格

 訴えの利益は、(A)権利保護の資格、(B)権利保護の利益、から構成されているが、権利保護の資格はさらに(1)訴訟物が具体的権利関係・法律関係であること(権利性)、(2)訴訟物についての攻撃防御方法に法が適用できること(法律性)、から構成される。

 さて、争いといっても、口げんかからサッカーの試合、学問上の議論など様々なものがある。サッカーの試合は権利性も法律性もない。権利性は満たすが法律性を満たさないものとして、宗教上の地位の確認の訴訟がある。逆に、権利性は満たさないが法律性は満たすものとして、特定の法律の抽象的な違憲性を確認する訴えが挙げられるだろう。

 ところで、法律学の議論はどうだろうか。学者同士が対立していて、請求の趣旨が「行為無価値論が妥当であることの確認を求める」であった場合、学者同士が権利義務の帰属を争っているわけではないので権利性は満たされないのは明らかだ。だが法律性はどうだろうか。行為無価値論の正しさを主張立証する攻撃防御方法として、実定法のあり方や実定法の解釈を援用する場合、それは法の適用に適しているのではないだろうか。つまり、行為無価値論が正しいかどうか、裁判所は判断できるのではないだろうか。その意味で、法律学の論争は、法律の違憲確認訴訟と同様、権利性はないが法律性はあるのではないか。