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司法府と立法府

 憲法の違憲審査は可能か。つまり、憲法の諸規定が互いに矛盾することを裁判所は審査できるか。これができるとする憲法の規定はない。例えば表現の自由とプライヴァシー権の両方を保障するのは矛盾のような気がするが、12条の公共の福祉の規定を介在させて矛盾は回避できそうだ。

 このように、憲法の諸規定が矛盾していそうなとき、憲法を正しく解釈することで矛盾を解消する、これは学者や裁判官の仕事である。81条により最高裁には法令審査権があるが、法令の違憲審査において当然憲法の解釈が介在する。憲法を解釈するということは、憲法の内容を充填・規定するということだ。そうすると、裁判所は憲法の解釈を通じて憲法の内容を規定できるのだから、せいぜい法律しか作れない国会よりも優位に立つことにならないだろうか。

 裁判所は憲法の内容をその文言の範囲内で形成できる。ただしその内容形成は通用力がない。それに対して、国会は通用力のある法律を作れるが、その法律は常に憲法に従属し、国会は憲法の内容を形成することはできないのだ。96条で国会に憲法改正の発議権を与えているが、改正には国民投票が必要なのであり、国会単独で憲法はいじれない。ある意味裁判所は国会に優位していないだろうか。