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知る権利

 知る権利は、もっぱら、表現の自由や参政権とのかかわりで論じられている。だが、ものごとを知るという働きは、もっと広範で根本的なものではないだろうか。

 知ることには、事実知と技術知があるとされる。事実知とは、「XはYである」といった命題形式の知である。一方で、技術知とは、自転車の乗り方などの技能の知である。例えば、「駅前にスーパーができた」という知識は、その知識を持つ人が食料を購入し生活し生存するために必要な知識であり、そのような知識を知る権利というものも考えられる。また、自動車の乗り方を知ることは、その人の移動の自由を拡大し、またドライブを趣味とすることによる自己実現を可能とするかもしれない。自動車の乗り方を知る権利というものも考えられるのだ。

 このような広い意味での知る権利は、たいていの人権を支える根本的な権利ではないだろうか。団体の存在を知らなければ、そこに入団する結社の自由も果たせない。営業方法を知らなければ営業の自由も果たせない。世界観や価値観を知らなければ思想・良心の自由も十分に発揮できない。