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刑法

 しかし刑法は面白い。受験勉強をやっていても、これはこういうアプローチができるんじゃないか?とか思ったりする。

 まず、故意の問題。38条「罪を犯す意思」。故意は認識であるとするという説と意思であるとする説がある。また、故意に違法性の意識やその可能性を要求する立場もある。つまり、故意の問題には、純粋な犯罪行為の知覚だけでなく、それを意欲する意志、また行為者に埋め込まれた社会的規範、そういうものがごちゃごちゃ入り混じっているのだ。認識の問題は、認識論や認知科学、意欲の問題は心理学や倫理学、規範の問題は倫理学などが担当するから、それらの知見によって犯罪者の心理的過程を緻密に理論づけたうえで、罰すべき故意というものを倫理学的に明らかにしていく。認識と意思の関係、意思と規範の関係、そういうものを、認識・意思・規範概念を精緻化することで明らかにし、当罰性というものも倫理学的に明らかにする。そうすれば故意概念に何が要求されるのかが明らかになりそうだ。

 あと、承継的共犯。自らが因果的に寄与していない行為についてまで、自らがそれを積極的に利用したという主観的な事情により行為全体につき責任を負わせる。このいかにも心情刑法のにおいのする犯罪類型をいかに説明したらよいのか。例えば、(1)ABが恐喝を事前共謀したとする。Aが被害者に暴行を加え、Bが財物を受け取るという役割分担が決まったとする。この場合恐喝を実行すれば普通にABの共同正犯となる。だが、(2)Aが初めから一人で恐喝しようとして被害者に暴行を加えていたところ、通りかかった知り合いであるBが「おまえちょっと手伝え」といわれて現場共謀し被害者から財物を受け取る。この二つの事例にそれほど違いがあるか疑問である。(1)における事前共謀が、それほどAB互いの行為を心理的に容易にしているだろうか。むしろ、それぞれが役割意識を持ち、孤独に自分の役割を果たさねばと思うのではないか。事前共謀でも互いに及ぼす因果的影響が弱い場合があり、それとの均衡を考えたとき、承継的共犯でも、それまでの犯罪を積極的に利用するような中途参加者には行為全体の責任を問うてもよいのかもしれない。

 ああ、だめだな。専門書読みたい。