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署名代理

 なんかもう、ブログ名を「たくいつ対策ブログ」にしようかと思うくらいなんですけれど、問題集の解説を読んでも基本書を読んでも、なぜそうなるのか分からない結論ってありますよね。そういうところをあくまで自分なりに理論的に考えていこうというのが僕の立場です。なぜなら覚えることができないから。それに、こういう風に考えることが法律についての深い理解につながる。

 今回は、署名代理がなぜ有効か、ということ。代理人が、代理行為をする際に、代理人であることを告げず、ただ本人の署名をして法律行為をする、そういう代理行為がなぜ有効なのか。この場合、形式的には顕名がなされていないのではないか。

 代理の際に顧慮すべき利益というのは、本人の利益と相手方の利益です。本人は、委任した範囲を超えた法的効果が自分に帰属されては困りますし、相手方は、自分の思った相手と違った相手との間で契約が成立しては困ります。では、署名代理の場合、本人と相手方の利益は十分顧慮されているのか。まず、署名代理の場合、代理人が本人による委任の範囲を超えた行為をしない限り、本人の利益を害することはありません。むしろ代わりにやってくれてありがとう、というところでしょう。次に、相手方は、署名によって、誰に効果が帰属するかが分かりますから、意想外の相手との契約の成立という弊害はありません。つまり、顕名の趣旨というのは、代理人と本人が別人であることを相手方に知らせることではないということです。それは契約にとってどうでもいいことです。代理人と本人が別人であっても、相手方の意図する人間に法的効果が帰属すればそれで問題はないのです。顕名の趣旨は、あくまで相手方に効果の帰属先を伝えることにあります。だから、署名代理でも、効果の帰属先が相手に分かる以上、それは有効としてよいわけです。