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代理占有

 民法上、代理は法律行為についてなされるものである。ところが、民法上、本人の代わりに誰かに何かをやってもらうというのは、法律行為の場合に限られない。準委任の場合がそうである。事実行為でもそれを要件として法律効果が発生する場合がある。本人が準委任により他人に事実行為を委任したときなどに、その事実行為による効果を本人に帰属させる必要が生じる場合がある。

 その代表的な例が代理占有だと思う。これは法律行為の授権にもとづくものではないから民法上の代理ではないが、事実行為としての占有を本人のために許されているのである。代理占有の要件は(1)占有代理人の所持(2)占有代理人の本人のためにする意思(3)占有代理関係の存続、である。これは、代理の場合で言ったら、(1)は代理行為、(2)は顕名、(3)は授権関係、に相当する。この効果として、本人のために取得時効が進行し、本人が占有訴権を行使できるのだ。

 法律効果を発生させるのは法律行為だけでない。事実行為も法律効果を発生させる。法律効果を発生させる事実行為を本人のために行う場合、それは法律行為ではないゆえに代理概念では説明できない。だが、「他人の行為(法律行為であれ事実行為であれ)による本人への効果の帰属」という意味では代理と同類であり、代理と同じような要件・効果を導いて良いのである。