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幸福という不幸

 最近まで、私は、自分の価値が見いだせず、またあらゆるものに絶望したりして、精神的には危機的な状況にあった。試験の失敗による憂鬱もあった。だが、それらの嵐が去った後、今私を満たすものは穏やかな自己肯定とささやかな希望である。私はある意味幸福になってしまった。だが、幸福になると同時に、人生が非常に薄っぺらいものになってしまった。危機の時代において人生はとてつもない深みを持っていた。人生はあらゆる思想や感覚と接点を持ち始め、私はとにかく危機を打開する方策を模索していた。感受性は強まり、思考は深まり、いろんなことに気づいていった。だが、幸福になったとたん、私の感受性も知性も、その鋭さを失っていった。私は鈍角的な幸福で自足してしまい、鋭角的な気づきの土壌を失った。私は今幸福という不幸のどん底にいる。