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保障・許容・禁止

 憲法は様々な人権を保障する。保障するということは禁止するということと表裏である。表現の自由の保障は、国家による表現の自由への不当な介入を禁止する。また、憲法は国家に様々な行為を禁止する。禁止と保障も表裏である。検閲の禁止は、表現の自由の保障である。

 ところが、保障でも禁止でもないものがある。憲法が「許容」したり、「尊重に値する」としたり、漠然と保障するのでその外延が明確でなかったりするものである。例えば、外国人の地方公共団体への参政権は憲法が許容するものとされているが、これは保障でも禁止でもなく、立法裁量により国家がどちらの態度を取ってもいいのだ、と留保するのである。また、法廷内メモにつても、憲法上「尊重すべき」とされていて、保障はされていない。立法政策上保障してもしなくてもいいのだ(実際保障されているが)。さらに、13条に基づく包括的な人権保障。例えば髪型についての自己決定権などは、憲法上保障されるかされないかあいまいである。

 このように、憲法は保障・禁止という判然とした態度でもって国民や国家に臨んでいるわけではない。保障でも禁止でもないグレーゾーンが厳然と存在し、そこにおいては立法府が合理的な裁量でもってその利益を保障するかどうか決定していくのである。