法社会学の体系的で標準的な教科書であり、ひとまずこれを読んでおけば、より細分化された論点にも全体的な観点から位置づけを与えることができるようになるはずである。
法社会学の定義から始まり、エールリッヒ、パウンド、ヴェーバーの古典的法社会学理論を説明、法意識や法観念とは何か、実際に社会で法はどのように作用しているかについて紛争や法使用、法曹や裁判について説明している。
個人的には、エールリッヒの「生ける法」、つまり実定法の外における社会過程の法的側面を解明するのが法社会学の一番の役割ではないかと思った。社会においてはいろんな段階の強制力を持った規範が複数存在する。単に法の次元で社会がどう動いているかではなく、いまだ法にならなくても人々を規律する規範と法とのある種の連続性を見据えないと、法と社会との接点は見えづらいと思う。そもそも、法以前の社会的規範に対するまなざしが無ければ、社会における規範の役割を幅広くとらえることができないし、多様な規範の中の一つの規範としての法の位置づけも見えてこない。
とにかく、法社会学の本格的な教科書を読みたい人にはおすすめです。