丸山眞男の師として有名な南原繁が東大で行った講演の中から厳選されたもの。とはいっても重複は多い。よく言えば主題が分かり易い。
南原は本書で戦後日本の平和主義や立憲主義を讃えている。特に敗戦の経験から平和主義の称揚は目立っていて、人類普遍の原理に高められたりする。そして、世界平和の維持のために、保守反動の台頭や朝鮮戦争、第三次世界大戦の可能性に大きな危惧を抱いていた。一方で、国際連合に強い希望を抱いていた。また、新憲法の制定を「人間革命」「精神革命」として、キリスト教の信仰へと結びつけていく辺りに政治学者としての特色があるのではないだろうか。
学問的な内容を吸収するための本ではないが、戦後の新憲法制定後の一知識人の精神の軌跡を知る資料になる。時代の空気が伝わってくる本である。