本書は日本が直面している貧困を哲学する意図で書かれている。
一つ目は「関係の貧困」。天皇制は同質社会の神話を再生産し、異物を排除する国民性の表れとして、他者との関係の貧困化と私たちの生の貧困化を導いていた。
二つ目は「共同性の貧困」。会社主義体制は中間共同体からの過剰な犠牲要求であり、個人が多様な共同性の諸次元に参画して「開いた共同性」を陶冶することを妨げていた。
三つ目は「合意の貧困」。55年体制から引き継がれたコンセンサス原理は、民主主義の外見をとりながら、少数者の意見を反映させることを困難にしていた。
リベラリズムとは異質で多様な自律的人格の共生であり、自由と平等を統合する。本書はこのリベラリズムの立場から、現代日本の抱えている貧困を批判し、より良い日本を創っていく羅針盤を提示している。単なる学者の教説で終わるものではなく、具体例に対する処方箋を提示することでその教説の実効性を示している点が優れている。大変参考になった。